「えらい客乗せちゃいましたね」
「私たちの仕事は、お客様を安全に
目的地まで届けることですから」
この事態にこう言い切る運転手。
4時間も運転して
かつ目的地まであと何時間かかるか
わからないというのに・・・・
ちなみに、料金は事前に1万円で契約していた。
「いま、タクシーの運転手は我々のようなロートルばかりです。
昔は、どうにか食えたけどね。
いまじゃ、子どもを育て、家を持つには厳しいね」
社会のこと政治のことをあれこれ話しながら
動かない車で時を稼ぐ。
「白石インター過ぎれば大丈夫でしょう」
しかし、その期待も裏切られる。
3時を過ぎる。
白石インターを過ぎてようやく
白石市街地に入る。
ほとんど車は走っていない。
寝静まった家々。
住宅街にそっとタクシーを止めてもらう。
「ありがとうございました。」
「すみませんでしたね。」
多めに料金を払おうとすると
「決めた料金いいです」と返されてしまった。
タクシを見送り自然と深々と頭を下げた。
Sさんは、寝ているらしく
玄関チャイムにも反応なし。
携帯で連絡をとる。
「大変だったね」
「いや、こんなに遅くいや早い時間で・・・」
時計は4時前。
それから四方山話で
6時過ぎ就寝。
7時起床。
朝食をいただき、
7時56分発の新幹線で福島へ。
福島駅にも帰宅難民風の方々が
力なく階段を降りてゆく。