ドイツは日本との時差が7時間。
しかし、この「時差」をはるかに超えて、
美しい風景の中で豊かな時間を楽しむ世界がドイツにあった。
仕事に追われ「貧しい時間」の日本で
暮らすしかない私には羨望を超えて
「辛さ」がこみ上げてきた。
どうして、こんなに違ってしまったのだろうか。
そのヒントを森林官であるミシェル・ランゲさんが教えてくれた。
ドイツの森林官は青少年の憧れの職業であり、
また社会的地位が高く、
そこに到達するには長期にわたる学習や経験が必要とされている。
森林関係に優秀な人材を養成・配置することをみれば、
ドイツ国民がいかに森林の経営管理について
重要視しているかということが理解できる。
彼が語ったいくつかを紹介しよう。
―人間が暮らす自然は、多くが人間がつくったものであり、
人間が作りかえたものである。だから、きちんとした自然感や科学的知識、
歴史から学ぶ見識がないと自然は壊されてしまう。
―なぜ、動物と触れ合うことが大切か。
それは、尊敬といたわりを学ぶこと。
馬や牛は、お互いに他者を補いながら多世代でグループを作って暮らす。
彼は、子どもたちをつれて私たちに会いにくることが多かった。
ビールを飲みながら、息子さんに聞いてみた。
「お父さんのどこが尊敬できる?」
「なんで、日本人は同じような質問をするの」
「日本は、残念ながらいま父親の存在が希薄になっていて、
疎んじられることが多いから」と答えると
「それは、悲しい」と言って、
彼は大声で笑った。