「AERA」11/12号。 高村薫の連載「平成雑記帳」から
「食糧自給率四〇パーセント以下という異常な状況を生み出し、
生産者や食品業界の経営を厳しいものにして、
不正な競争を誘っているのではないだろうか」
「牛肉のほとんどを輸入に頼りながら、
毎日のお総菜に牛肉百パーセントを求めるのは
まっとうな食の姿だろうか。高価な比内地鶏が、
スーパーマーケットで売られること自体が異様ではないだろうか」
「『無添加』だの『無農薬』だのを信奉しながら冬にキュウリやトマトを欲しがり、
スローライフを自称しながら世界じゅうの食材を欲しがり、
回転寿司で当たり前のようにマグロを食べ、冷凍庫を冷凍食品でいっぱいにしている私たちの現実は、そもそも安全・安心以前にひどく混乱している」
「食べるものへのありがたみが失われたことが根底にある」
「安全を叫ぶ前に、この国の農業・漁業・畜産業をほんとうに大事にする方が先である」
「食は生きるためにあるのであり、安全や鮮度は、
与えられた恵みの範囲内で折り合いをつけるべきものだ」